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こんにちは、湊です!
7月末の、<第20次ものづくり補助金>の採択発表から早1ヶ月が過ぎました。不採択通知を受け取った事業者様は、多くの時間と労力をかけられた中、大変悔しい結果だったことと思います。しかし、不採択は「終わり」ではありません。むしろ、事業計画をさらに磨き上げるための貴重なフィードバックと捉え、次回の公募に向けて準備を始めることが重要です。
本記事では、既に発表されている<第21次ものづくり補助金>の公募申請に向け、不採択となる事業計画によく見られる共通の課題を基に、次こそ採択を勝ち取るための「3つの見直しポイント」を、最新動向を踏まえて具体的に解説します。
【はじめに:第21次公募で変わったこと、変わらないこと】
まず、最新の第21次公募要領が第20次からどう変わったか、重要な点を押さえておきましょう。
・従業員数0名の事業者は対象外に: 個人事業主でも「従業員を雇用していること」が明確な要件となりました。
・事業計画書の図表ページ数拡大: 補足説明に使える図や画像のページ数が3ページから5ページに拡大。より視覚的に分かりやすい説明が可能になりましたが、ページ数超過は審査対象外となるため注意が必要です。
・事業計画の重複ペナルティ強化: 他社の計画と類似していると判断された場合、次回だけでなく次々回も申請不可となるなど、ペナルティが厳格化。オリジナリティの重要性が一層増しています。
審査の根幹である「革新性」「実現可能性」などが重視される点は変わりませんが、上記のようなルール変更への対応は必須です。
【見直しポイント1:「技術面の革新性」を再定義する】
不採択理由で最も多いのが、この「革新性」の伝え方です。審査員は、単に最新の機械を導入するだけの計画を評価しません。
✖ よくある不採択パターン
「古くなったA機械を、最新のB機械に更新し、生産性を20%向上させます」
→ これでは単なる**「設備の更新」と見なされます。なぜ、その設備でなければならないのか、それによって自社の製造プロセスや提供サービスが“どう画期的に変わるのか”**が伝わりません。〇 改善のための見直し方
「誰の、どんな課題を、どう解決するのか」という視点で、技術的な優位性をストーリーとして語り直しましょう。① 技術的な課題の深掘り
見直し前: 熟練工の感覚に頼った作業が多く、品質にばらつきがあった。
見直し後: 熟練工の退職が迫っており、「0.01mm単位の研磨技術」の継承が必要。このままでは主要取引先から要求される新製品の品質を満たせず、年間5,000万円の新規受注に対応できないリスクがある。
② 解決策の具体化
見直し前: 最新のAI搭載研磨機を導入する。
見直し後: 熟練工の研磨データをAIに学習させた「〇〇式AI研磨システム」を搭載した研磨機を導入。これにより、若手従業員でも熟練工と同等以上の品質を安定して実現できる「技術継承の仕組み」を構築する。
③ 革新性の言語化
見直し前: 生産性が向上する。
見直し後: これは、単なる設備更新ではなく、属人化していた伝統技術をデジタル技術で標準化・再現する革新的な取り組みである。将来的には、このノウハウを同業他社へ提供することも視野に入れている。
このように、背景・課題・解決策・将来展望を一気通貫で語ることで、「革新性」の説得力は格段に増します。
【見直しポイント2:「市場ニーズとのズレ」を解消する】
「こんなに凄い製品を開発したのに、なぜ評価されないのか…」というケースは、市場ニーズの分析不足が原因かもしれません。「作り手目線」から「買い手目線」へと視点を切り替えることが重要です。
✖ よくある不採択パターン
「当社の技術力を結集し、業界最高水準のスペックを持つ新製品Xを開発します」
→ 技術的な優位性に終始し、「誰が、なぜ、いくらでそれを買うのか」という最も重要な点が抜け落ちています。〇 改善のための見直し方
客観的なデータや顧客の声を基に、「売れる蓋然性(がいぜんせい)」を徹底的に証明しましょう。① ターゲット顧客の明確化
見直し前: 当社の顧客
見直し後: 従業員50名以下で、これまで高価な海外製検査装置の導入を躊躇していた国内の中小食品メーカー(推定市場規模〇〇億円、〇〇社)
② 市場ニーズの裏付け
見直し前: 高品質な製品へのニーズがある。
見直し後: 業界紙の調査では、中小食品メーカーの7割が「異物混入対策」を最重要課題と回答。既存顧客3社からは「海外製の半額程度の価格なら即時導入したい」との具体的なヒアリング結果を得ており、購入意向書(サンプルでOK)も取得済み。
③ 競合優位性の証明
見直し前: 競合のY社製品より高性能。
見直し後: 競合Y社製品は高機能だがオーバースペックかつ高価。本計画で開発する製品は、中小企業が必要とする機能に特化することで、性能を維持しつつ価格を40%抑制。導入後の保守・サポート体制も国内拠点から迅速に行えるため、サービス面でも差別化が可能。
「欲しい人が、これだけいる。だから、売れる」という論理を、感情論ではなく客観的な証拠で固めることが、事業の実現可能性をアピールする上で不可欠です。
【見直しポイント3:「数値計画の甘さ」を徹底排除する】
事業計画のストーリーが良くても、それを裏付ける数値計画に矛盾や甘さがあれば、一気に信頼性を失います。特に、賃上げ計画との連動性は厳しく審査されます。
✖ よくある不採択パターン
「設備投資で生産性が上がり、利益が出るので、給与を年率3%上げます」
→ なぜその設備投資で、いくら利益が生まれ、その利益がどう賃上げに繋がるのか、という計算の過程がブラックボックスになっています。〇 改善のための見直し方
全ての数字の「算出根拠」を明確にし、ストーリーと数字を完全に一致させましょう。① 付加価値額の算出根拠を明確に
付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
設備投資によって「売上がどう増えるか(=営業利益増)」、「利益をどのようにして従業員に還元するか(=人件費増)」などを具体的な計算式で示す。
例: 時間あたり生産量10個→15個(50%増) ⇒ 1日の生産量80個→120個 ⇒ 月間売上400万円→600万円(200万円増)⇒ 粗利80万円増… といったレベルで詳細に記述する。
② 給与支給総額の計画を具体的に
基本要件である「給与支給総額を年率平均2.0%以上増加」について、現在の給与支給総額を正確に記載した上で、計画期間中の具体的な増加額と増加率を示す。
例: 現在の給与支給総額:5,000万円 → 1年後:5,100万円(2.0%増)、2年後:5,202万円(2.0%増)…
③ 利益と賃上げの連動性を記述
①で算出した**「事業で生まれる利益」が、②の「賃上げの原資」となること**を明確に文章で結びつける。
例: 本事業により創出される年間80万円の粗利増を原資とし、従業員5名に対し、年率2.0%(年間75万円)の給与引き上げを着実に実行する
数値計画は、事業の実現可能性を客観的に示すための最重要パートです。一つ一つの数字に責任を持ち、誰が見ても納得できるロジックを構築してください。
まとめ:不採択は、採択への最短ルート
ものづくり補助金の不採択は、決して無駄な経験ではありません。不採択になった計画には、必ず伸びしろがあります。
今回ご紹介した「①技術面の革新性」「②市場ニーズとの接続」「③数値計画の甘さを排除」という3つの視点でご自身の事業計画をもう一度見直すことで、計画の解像度は飛躍的に向上するはずです。
当社では、これまで多くの事業者様の再挑戦をサポートし、採択へと導いてまいりました。もし、ご自身での見直しに行き詰まったり、専門家の客観的な意見が欲しくなったりした際には、いつでもお気軽にご相談ください。
次回の公募で、貴社の素晴らしい計画が採択されることを心から応援しております!!
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こんにちは、吉川です。
先月の投稿では、ものづくり補助金の交付申請に必要な提出資料についてご紹介しました。
今回は、その中でも今回の公募回より追加された「賃金引上げの表明に関する確認書類」について詳しくまとめます。弊社でご支援している事業者様からも、
「どうやって表明すればいいの?」
「確認書類って何を提出すればいいの?」
といったご質問を多数いただきました。そこで今回は、具体的な内容や提出方法について解説いたします。
前回の投稿はこちらからご覧いただけます。
賃金引上げの表明とは
ものづくり補助金では、事業計画期間終了までの間、次の要件を満たすことが基本条件となっています。
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事業場内最低賃金を都道府県の最低賃金+30円以上にする
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給与支給総額または1人あたり給与支給総額の年平均成長率を2.0%以上増加させる
補助金申請時に設定した上記の目標値を、従業員や役員に表明する必要があります。
表明する内容
表明する内容は、交付申請の提出資料「申請内容ファイル(Excel)」内の「賃金引上げ計画の表明書」に記載された内容です。
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申請時に設定した目標値は自動入力されています。
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表明時には以下を記載します。
・宛名 ・表明日付 ・補助事業実施場所の住所 ・法人名 ・代表者氏名
申請内容ファイルのダウンロードは、こちらから
提出資料の具体例
1.全従業員が個人メールアドレスを所持している場合(メール送信)
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メールの宛先が確認できる写真やスクリーンショット
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メール本文
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誰宛に送付しているか分かるよう、本文には「○○株式会社 全従業員の皆様」などを明記
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表明方法は「賃金引上げ計画の表明書」の内容を本文に入力してもOK
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もしくは「賃金引上げ計画の表明書」をPDFで添付しての表明でも可能(PDFを添付する場合は、添付したPDFも併せて提出します)
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2.全従業員が個人メールアドレスを持たず、掲示板で共通する場合
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誰に向けて表明しているか分かるよう、「○○株式会社 全従業員の皆様」などを明記
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「賃金引上げ計画の表明書」の内容を印刷し、掲示板に掲載した様子の写真
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掲示している内容が確認できる写真、または原本
※写真のサンプル
※注意点
書類審査を行う担当者によっては、上記の内容だけでは認められず、追加資料の提出を求められる可能性があります。
必ず事務局の指示に従って進めてください。ポイントとしては、表明する対象や方法に応じて証拠資料を揃えることが大切です。
書類の準備は少し手間ですが、コツを押さえればスムーズに進められます。ぜひ参考にしてみてください。 -
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こんにちは、鮫島です。
「2024年から始まった「中小企業省力化投資補助金」は、多くの事業者様に注目されている支援制度です。特に人手不足が深刻化する中、デジタル技術や自動化機器を導入して省力化・省人化を進めることは、今後の企業競争力に直結します。今回は、第3回公募を振り返りながら、制度の要件や今後の申請に向けたポイントを整理します。
1.省力化(一般型)とカタログ型の違いは?
省力化(一般型)補助金は、中小企業・小規模事業者が人手不足対応や生産性向上を目的に、省力化につながる設備投資を行う際に活用できる補助金です。これまでは「カタログ」に掲載された省力化機器のみが投資対象であったため、100%自社に合う機器が見つからない場合もありました。
しかし、令和7年から、中小企業省力化投資補助金[一般型]が新設され、カタログに登録されていない省力化設備やオーダーメイド(セミオーダーメイド)の設備・システム等の導入に活用できるようになりました。省力化補助金について
一般型とは?
省力化補助金の「一般型」とは、カタログに掲載されていない機器やシステムでも申請が可能な枠組みで、自社の業務フローに合った機器を導入したい場合には「一般型」が有力な選択肢となります。
例えば下記のようなご投資内容が当てはまります。
・自社専用にカスタマイズした搬送装置
・カタログ未掲載の最新AI検査システム
・ITベンダーが構築する独自の在庫管理システム
特殊性の高い投資も対象となり、自由度の高さが最大の特徴です。
一方で、カタログ型と違って「導入効果が保証されていない」ため、計画書で効果をしっかり示すことが採択の鍵となります。一般型のメリット
・自由度が高い:カタログに縛られず、自社のニーズに合った設備を導入できる。
・最新技術も導入可能:まだカタログ化されていない新製品やオーダーメイド機器も対象。
・差別化投資ができる: 他社が真似しにくい独自の効率化を実現できる。
一般型の注意点
- 計画書の難易度が高い:
・どのような機器か
・なぜ省力化につながるのか
・数値的な効果(作業時間の削減、人員削減効果など)
を自社で根拠を示して説明しなければなりません。 - 審査が厳しい: カタログ型に比べて効果の裏付けが求められるため、審査基準が厳しい。
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申請に向けた準備のポイント
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- 現状の課題を数値化
・作業工数
・人員配置
・人件費
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- などを「現状」と「導入後」で比較できるようにしておく。
- 導入効果をシミュレーション
「作業時間を30%削減」「人員1名を他業務へ配置転換可能」など、具体的な数値を示す。
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- 実施スケジュールを現実的に設定
補助事業の期間内に機器導入が完了できるかを必ず確認する。
まとめ
省力化補助金の一般型は、自由度が高い一方で申請の難易度が高い類型です。 自社専用の設備や、カタログにない新しい技術を導入したい場合には最適ですが、導入効果を数値で示すことが不可欠となります。
省力化補助金の申請準備について「少し相談してみたい」という段階でも構いませんので、
どうぞお気軽に弊社までお問い合わせください。その他の補助金についてもご相談お待ちしております。 - 計画書の難易度が高い:
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中小企業省力化投資補助金(一般型)の採択実績を更新しました。
採択実績はこちらから -
こんにちは、田邉です。
今回は「補助金っていろいろあるけど、どれがうちに合ってるの?」という声にお応えし、
主要な補助金制度の違いとその“使い分け”の考え方についてご紹介します。はじめに:補助金の「選び方」で成果が変わる
補助金申請というと、「とりあえず出せばよい」と考えがちですが、制度ごとに目的や条件が大きく異なります。
適切な制度を選ぶことが、採択や活用効果に大きく影響します。
補助金は、事業の成長戦略に合わせて“選ぶもの”です。まずは制度ごとの違いを整理しましょう。主な補助金制度の概要
使い分けの判断軸
1. 事業内容のタイプ
・「新市場に進出したい」→ 新事業進出補助金
・「事業自体を転換したい」→ 事業再構築補助金
・「技術的な差別化で勝負したい」→ ものづくり補助金
・「人手不足を機械で補いたい」→ 省力化補助金
2.投資対象の違い
・建物費が大きい → 再構築・新事業進出
・精密加工・検査機器 → ものづくり
・ロボット・搬送機 → 省力化
3. スケジュール感・事務負担
補助金によって、準備にかかる時間や、申請〜採択までのプロセスの重さが大きく異なります。
新事業進出補助金は、提出書類が多く、計画書の記載内容も複雑です。
市場分析や数値計画、差別化戦略などを丁寧に整理し、申請までに2〜3か月の準備期間を要するケースも一般的です。
省力化補助金(一般型)も、カタログ型に比べると申請負担は大きくなります。
設備選定の自由度が高い分、業務フローや改善効果の構造を自社で設計する必要があります。4.採択率・競争性
補助金はすべてが「申し込めば通る」わけではなく、制度ごとに競争倍率や審査傾向が異なります。
ものづくり補助金・事業再構築補助金は採択率25〜35%前後。
省力化補助金(一般型)は68%。
新事業進出補助金に関しては、採択結果がまだ発表されていない状況である。
省力化補助金(一般型)の採択率が高くなった理由として、政府による「省力化投資の後押し」が背景にあると考えられます。
採択企業の約6割は製造業、約1割は建設業で構成されていますが、卸売業・宿泊業などの非製造業も3割以上を占めており、
業種を問わずチャンスがある補助金と言えます。まとめ:制度に合わせるのではなく、戦略に合う制度を選ぶ
補助金は、制度に“自社を合わせる”ものではなく、戦略に合った制度を選ぶことが重要です。
「この補助金で何を実現したいか」を起点に、制度ごとの特徴を踏まえて選定することで、
採択率も実行後の成果も大きく変わってきます。
制度の選び方や申請の準備について「少し相談してみたい」という段階でも構いませんので、
どうぞお気軽に弊社までお問い合わせください。
皆さまの課題を全力でサポートいたします。